思い出


ひととおり大泣きして、ようやく仰木さんのニュースを見ても
涙が流れなくなるくらいには気持ちが落ち着いた。ただ、あまりにも突然だったので
未だに信じられないし、ってゆうか信じたくない*1というのが正直なところなんだけどさ…。


今からもう20年近くも前、当時高校生だった私は、友人の影響で
ヤクルトスワローズのファンになっていた。当時ヤクルトには、今で言う「イケメン」の
選手が多かったので、ミーハー的な要素で好きになったという不純な野球ファンだった。
だけど、当時テレ朝で通常番組をふっ飛ばして放送された『10.19』に、時間を忘れるくらい
惹き込まれ、この時以来、テレビで好きな選手が映るだけでキャーキャー騒いでただけの
ミーハーファンから、直接球場に訪れて好きなチームを応援する「野球ファン」に
なっていったように思う。


羽田梨田選手の渾身のタイムリー、鈴木貴久のホームへのガッツ溢れるヘッドスライディング*2
有藤監督の時間稼ぎの抗議(当時は試合時間に制限があった。確かこの件がきっかけで、
パ・リーグの時間制限は無くなったように記憶してるのだが…)、
そして高沢の同点ホームラン、打たれた阿波野の絶望の表情、引き分けが確定した時点で
優勝の決まった西武の選手達が西武球場で行なった胴上げ、そして、試合が無いにもかかわらず
西武球場に駆け付けていた西武ファンの喜ぶ顔、それらの記憶が未だに焼き付いていて離れない。
あの『10.19』は、リアルで見た人間にとって、財産と言えるほどの特別な記憶なのだ。


これだけ激しい試合をして、しかも優勝できなかったのだから、翌年の近鉄は力尽きても
仕方が無かったと思うのだが、前年のリベンジを見事果して近鉄パ・リーグを制覇した。
しかし、日本シリーズは巨人相手に3連勝でリーチをかけたにもかかわらず、有名な加藤哲の
放言事件(笑)で猛烈に巨人に巻き返され、残念ながら日本一にはなれなかった。だから
数年後にイチロー等の活躍で、オリックスが日本一になった時には「仰木さん、良かったね」と
本当に本当に感激した。こういった一連の流れで、私はすっかり「仰木彬」という人間に
魅了されていたのだ。


野球に対する熱が冷めても、人から好きな野球チームを尋ねられた時は「セはヤクルト、
パは仰木さんが監督のチーム♪」などと答えていた。それほど、マスコミを通して知る
仰木彬という人は、野球人としても人間としても魅力的だった。これほどの気持ちを
抱かせてくれた人間がいなくなってしまったことを、私はどうしても認めることが
出来ない…。いつになったら、受け入れられるのだろう。


最後に、自分が一番好きな仰木さんのエピソードを。
チームが地方に遠征する際は、門限が決まっているのがフツーなのだが、仰木さんが
監督のチームには門限が無かった。理由は「自分が(門限を)守れないから」だそうだ(笑)。
未だに髪型や服装、果ては言葉遣いにまで口を出す、頭にカビの生えたような監督が
存在する中、仰木さんの「個々の自主性」を重んじるといった姿勢は、やろうと思っても
実際には中々出来る物では無いと思う。選手を信頼していなければ出来ない芸当だよね。
規則が無いからってバカやるような奴は、そもそもプロとして失格なワケだし。
(選手を規則で縛り付ける監督って、結局は自分の度量に自信が無いから、規則で選手を
支配下に置かなくちゃ安心できないんだろうね*3
野球選手はグラウンドで結果を出せばいいのであって、社会人として基本的な礼儀さえ
身に付けていれば、私生活に関しては監督から何か言われる筋合いなんて無いと思う。
規則が無いと選手を管理できない、指導力不足の監督の皆様、選手に多くを求めるより先に
まずは自分が「選手から尊敬される監督」を目指してみてはいかがでしょうか?
尊敬できる監督なら、選手は自然について来るでしょうよ。仰木さんのように。

*1:スガシカオ「Go!Go!」

*2:彼も故人なんだよね…

*3:これって普通の会社の上司にも言えることだよな。それを考えると、本当に仰木さんって理想的な上司だったんだろうね